雪白の月


act 1

夜勤の途中 岩瀬が空を見上げポツリと呟いた―


「月が綺麗ですよ…。」

つられて見上げると、中空に射しかかろうかという月が輝いていた…

「本当だな…。」
「今日も無事に過ぎそうですね。」
「そうだな…。」

ここのところ大きな事件もなく、隊は安定していた。

「さあ。巡回を続けるぞ。」
「はい。」

そう言って二人で外周の巡回を再開し、そろそろ館内に戻ろうかという時―

―ピッ― 

「石川だ。」
「三舟です。今、内藤さんから連絡がありました。総理官邸の方に爆破予告が来たそうです…」
「内容は?」
「…『総理を降りろ。』と一言だけです。」
「…そうか。で、内藤さんからは?」
「―総理官邸の事は心配するな。そっちは任せた。―と。」

それを聞いて石川はクスリと笑った

「内藤さんらしい… 解った。警備をレベル3に引き上げ様子を見る。各隊員もそれに伴い通常勤務から非常勤に変更。」
「了解しました。」
「各班 即行!」
「「「了解。」」」

指示を出し終えた石川は小さく深呼吸をし…

「行くぞ。岩瀬」
「はい。」 と館内へ戻ろうと駆け出した―


   + + +


中央管理室に戻ると、タイミングよく内藤から連絡が入っていた―

「お疲れ様です。内藤さん。」
「お疲れさん。石川、そっちはどうだ?」
「今のところ異常はないですが…。官邸の方は…?」
「こっちも今のところ何もないな…。」
「そうですか…。タダの予告ではないんですか…?」
「そうだといいが…。未確認情報だが今追っているテログループが活動を始めたらしい…。」
「…そうですか…。こちらは任せてください。」
「あぁ。じゃあな。また連絡する。」

そう言って内藤からの通信は切れた。 石川は周りを見回し―

「今、聞いたとおりだ。皆 十分に警戒してくれ。」
「「「了解。」」」
「三船。外警管理室に行ってくる。常時連絡を。」
「了解です。…あまり無茶をしないで下さい。」

そう言って三舟は言葉は石川に。視線は岩瀬の方に向ける…『隊長から目を離すな』と。
忠告された石川は少し苦笑しながらも

「…解った…」

視線を向けられた岩瀬は無言で…『大丈夫です』と。
そして中央管理室を後にし、外警管理室へと向かった―







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